握手、ビズ(頬へのキスの真似)の起源
フランス社会では、人に会った時は必ず相手と握手をしたり、友人同士で親しくなるとお互いの顔の両方の頬にキスをする仕草であるビズ(bise)をしたりして友好の証を示し、これをしないと相手が自分は信頼されていないのかと疑われてしまいます。
親しい相手との手紙やメールの結びにも、
「Je t’embrasse.(さようなら。元気でね)」
というキスに関する単語を用います。
友人同士、会社の部署の同僚全員とこのやり取りを行う握手とビズという作法、今回の記事は短いながらその歴史をお話します。
握手の歴史
握手が挨拶、社会の規範となるのは紀元前5世紀まで遡ると言われています。
物事や意見の対立を剣で解決していた時代に、何も武器を持っていない手で相手の手を握る行為は平和の証として使われ始め、相手に対する信頼の証となりました。
イスラエルのワイツマン研究所の社会学の研究によると、この習慣は哺乳類がお互いの優位性(支配と従属)、健康状態、つがいとなる対象かを判断するためのコミュニケーションに由来すると説明しています。
ビズの歴史
挨拶の作法としてビズの歴史は古代ギリシャ時代もしくは古代インドまで遡り、カーマ・スートラ(古代インドの性愛論書)にはキスの種類が30種類以上あると記されているそうです。
のちに古代ローマ人が2000年前に洗練された礼儀作法に昇華させ、家族間や夫婦間でこの時頬へのキスがおこなわれた。
時が流れて397年のカルタゴ(現在のチュニジアの首都チュニスの郊外)で開かれたカトリックの宗教会議で男女間でキスをすることは禁止され、これが20世紀まで続きます。中世では騎士階級や学者の間で謝意として男性同士にのみ、その時は口同士もしくは相手の手の指輪に対して行われておりました。そしてさらに14世紀には当時ヨーロッパの人口を3分の1にまで激減させたペストの伝染の要因とされ、キスという行為は完全に途絶えます。
ルネサンス期(14~16世紀)や18世紀にはひそかに続いていたものの19世紀まで禁止されていたキスという行為。フランスでそれが解放されたのは、1968年5月革命の後になります。
現代のフランス社会では、このビズという行為は同じコミュニティへの帰属の証としてスポーツチームやその他のサークルのメンバー、友人グループの中で行われております。
現在
2020年に始まった新型コロナウィルス感染拡大によりフランス社会でもマスク着用とソーシャルディスタンスを取ることが義務付けられてから約1年半。
この記事を書いている2021年10月、コロナワクチン接種が浸透していったフランスでフランス在住の友人に尋ねたところ、本当に親しい間柄以外はみな以前まで当たり前だった習慣を控えているそうです。
個人的には、会った人と握手をする習慣が好きだった私は、握手する習慣がない日本社会は少々物足りません。
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